不死身の漢 ~映画・その他ブログ~

ブログ復活しました。主に映画・アニメ・ゲームの雑記、レビューをしていくつもりです。

『トリプル フロンティア』 ベン・アフレック主演のネットフリックス映画

  俺達は何年も国に尽くしてきた。訓練し、実戦で戦い、大勢の人間を殺した。命を賭けて国に貢献した。

 だが軍を辞めた後、俺達に残ったのは惨めな人生だけ。軍隊に長く居すぎたせいで普通の社会には馴染めない。軍隊で覚えさせられた人を殺す技術は営業や接客の仕事には役に立たない。だから稼げない、金もない。人生で一番大切な20代と30代を軍隊生活で捨てちまったんだ。

 何だよ、何が言いたい?「自分の意志で入隊したんだから自己責任だ」だって言いたいんだろ?

…こんなの不公平だ。

 俺達は命を賭けて働いた分だけの金を得る権利があるはずだ。

 だから俺達は同じ気持ちを持った仲間と、これまで磨いてきた技術を駆使して金を奪う! 

 何が悪い? 文句あるか?

 「トリプルフロンティア」の画像検索結果

 

 

トリプル・フロンティアでなくスリー・フロンティア

 最初の痛い文章は、映画を観て思わず書いてしまったものだ。

 題名のトリプル・フロンティアとはブラジル、アルゼンチン、パラグアイをまたがる国境線の名前である。

 国境線に3つの国が重なっていることからそう呼ばれている。しかしこの映画で実際の舞台となっているのはブラジル、ペルー、コロンビアの三つの国境が重なったスリー・フロンティアと呼ばれる地帯である。

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 なぜスリー・フロンティアが舞台の映画でタイトルが『トリプル・フロンティア』なのか? このタイトルには何か別に深い意味があるのか、それともただの間違いかは調べてもよくわからなかったが、まあ、とりあえずそんなトリビアである。

 

黒に近いグレーを描く、チャンダーの物語

  主人公トム(ベンアフレック)は、元々は米軍特殊部隊のリーダーとして何年も戦ってきたが、軍を除隊した後は職が見つからず、離婚した妻に引き取られた子供の養育費さえ払えずにいる。彼を補佐するミラー(チャーリー・ハナム)も講演会でのスピーチくらいしか仕事が無い。二人は昔の仲間から、ブラジルに住む麻薬王を殺して大金を奪う計画を持ち掛けられ実行に移すが、ロクな生活を送ってこなかったトムは実際に大金を前にしたことで欲望が暴走し、計画は崩れ始める。大勢の護衛達を射殺するハメになり、重量オーバーになることも構わずトムは大量の金を全部持ち出すことに拘る。その結果、脱出路のアンデス山脈を越えられなくなり、ヘリは地上の農村に墜落、しかも行き違いによってそこにいた罪のない村人まで撃ち殺してしまう・・・

 

 この映画の最大の問題点は主人公のベン・アフレックがバカすぎるために危機に陥っていくという展開である。

 おそらく、この映画を見ながら誰もが「ああ、あそこでベン・アフレックがアホな事をしなければ…」と思いながらイライラすることだろう。しかしこれは仕方ない。

 監督・脚本のJ・C・チャンダーの映画は、アメリカンドリームを掴もうとする一人の男、または複数の男たちを描く物語である。アメリカンドリームに限らず、全ての“夢”と言っていいかもしれない。夢のために強欲になっていく男達が険しい道を選択していくのがチャンダーの映画だ。

マージン・コール [DVD]

 彼の最初の監督作マージン・コール(2011年)はリーマンブラザーズをモデルにした架空の投資会社で働く男たちを主人公にしたドラマだ。2008年の金融崩壊を前にして、彼らが人間として最低な汚い決断を行い、それを実行するまでを描く物語だった。

 

 

 

 2作目『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』では、 “我々の男”とクレジットされる一人の初老の男が、沈みかけたヨットで海を漂流し、生き残るためサバイバルする物語。ヘミングウェイの『老人と海』を彷彿とさせるこの映画はさっきの“夢”の話とは関係ないように思えるが、やはりこの初老の男も海を漂流しながら、目前に迫った死を前に 強欲によって犯した自分の過去の過ちを初めて後悔する。

 

 2014年の3作目『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』では、80年代のNYで灯油ビジネスを通して成功を夢見る移民の男が、最初は真っ当なポリシーと健全な方法で成功を掴もうとするも、次第にアメリカという国の現実と非情さと暴力に翻弄され、流されていくように汚い手段を選ぶようになる…という映画だった。

 

 全ての映画に共通しているのは非情な世界の中で、夢を掴むまで必死に生き残ろうとする男(達)、という部分である。生き残るためにその男たちが汚い選択をしていく、という部分も共通している。(『オール・イズ・ロスト』においても主人公がかつて間違った決断をしたことが微かに仄めかされている)

 そして『トリプル・フロンティア』においては、ベン・アフレック演じる主人公 トムがそういう男なのである。ベン・アフレックはインタビューでこう答えている。

 

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「この映画は、マスキュリニティ(男らしさ)の良い面と悪い面の両方が炙り出されています。良い面というと、お互いに対して忠実であるところ、愛情を持って接するところ、そして、つらい時に支え合うところです。そして悪い面は、暴力で問題を解決するところ」

 

「僕が考えるに、マスキュリニティは常に2つの面でできているということを(J・C・チャンダー監督は)表現したかったのだと思います」

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 アフレックは「二つの面」という言葉を使っているが、実際チャンダーの映画に出てくる人間は二面性を持った者たちばかりだ。

 『アメリカン・ドリーマー』には真っ当なビジネスで成功しようとする主人公は明らかな善人として出てくるが、後半になるにつれ、彼の中の汚い部分が見え始める。しかし単純に「善良な男が悪に染まった」という風には決して描かない、元から両方の顔を持っていたのである。

 監督のJ・C・チャンダーはこの『アメリカン・ドリーマー』を作った際に、インタビューで「人生には白黒ハッキリした選択なんてない。いつだってグレーだ。そういうグレーの領域にこそ、真の人間の物語がある。本作でもそこを描いたつもりだ。」と発言している。「本作でも」という言葉どおり、これがチャンダーの映画のテーマであり、『トリプル・フロンティア』でもそれが描かれているのだ。

 チャンダーの映画としては初のアクション映画ではあるが、なかなか骨太な娯楽性の高い内容になっているのが良い。元々はキャサリン・ビグローが監督する予定でスタートした作品だったらしい。イラク戦争で爆弾処理にのめりこむ男を描いた『ハートロッカー』や、ビン・ラディン追跡に手段を選ばないCIAの女性捜査官を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』など、ビグローも“グレーの世界”で生きる人間達をテーマにしていることを考えると、後任の監督としてチャンダーを置いたことは非常に正しい選択であったと思う。

 

 しかし一つ批判めいたことを言うなら、ラストにトムの仲間たちが全てのお金を彼の家族に寄付して去っていく場面で、「グレーの物語」から「ちょっといい話」風になっていることに違和感がある…といったところ。

 

 

 

 

マージン・コール (字幕版)

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 チャンダーの名を有名にした作品。低予算でありながらオールスターキャストである。

 

 『老人と海』の影響が色濃い作品。ロバート・レットフォードの全編台詞ほぼ無しでの熱演がすごい。

 

アメリカン・ドリーマー 理想の代償 [DVD]

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1人の善人が金と権力と暴力の世界に染まっていく。こちらは 現代版『ゴッドファーザー』のような作品。