不死身の漢 ~映画・その他ブログ~

ブログ復活しました。主に映画・アニメ・ゲームの雑記、レビューをしていくつもりです。

『イベント・ホライゾン』の恐ろしさ① 隠れた名作になった『イベント・ホライゾン』を解説。

 

○『イベント・ホライゾン』というB級映画

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2014年クリストファー・ノーランの『インターステラー』が公開され、その圧倒的映像で高い評価を受けました。

ところでこの映画、劇中乗組員の一人がワープを説明するシーンで映画ファンの一部は「おっ?」と思いました。

このシーンどこかで見た・・・どこかで見た・・・。

そうだ!

  ドラえもんだ!

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違う!違くないけど違う!

イベント・ホライゾン(97年)だ!

 というわけで最近『イベント・ホライゾン』を見直しました。

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左が『インターステラー』、右が『イベント・ホライゾン』。ドラえもんがやったくらいだからどこかに元ネタがあるのだろうか? 現在のところ不明。

 

イベント・ホライゾン』は97年のホラー映画で、監督は今や『バイオハザード』の監督で知られ、映画ファンからは『ダメなほうのアンダーソン』と言われているポール・W(ウィリアム)・アンダーソンです。ちなみに『ダメな方』と言われるのは同じ名前の監督でポール・T(トーマス)・アンダーソンという鬼才監督がいるからです。こっちは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『パンチドランク・ラブ』などの傑作を撮っています。

ポール・W・アンダーソンの作風についてはこの記事の中で触れました。

 全然違うジャンルの監督なのに、同じ名前故に「ダメな方アンダーソン」などと呼ばれている不幸な男です。

しかしポール・W・アンダーソンは当初は映画ファンの間で評価が高い映画を何本か撮っていました。その一つが97年に監督していたホラー映画『イベント・ホライゾン』です。同じ時期に『スフィア』というダスティン・ホフマン主演の深海ホラーがあり、それと酷似した内容です。

西暦2047年、7年前に行方不明となった宇宙船イベント・ホライゾン号が突如として冥王星付近に出現する。EH号はワープ航行の実験中に行方不明となった船だった。
ワープ装置の開発者ウェア博士(サム・ニール)と、”怖いもの知らず”と評判のミラー船長(ローレンス・フィッシュバーン)とそのクルーたちは、救助宇宙船ルイス・アンド・クラーク号で海王星へと向かう。しかしそこで待ち受けるのは未知の恐怖だった・・・。

というストーリーですが、映画を観た人はすぐにわかったと思いますが、この映画は見たことあるシーンだらけです。序盤は『エイリアン』、中盤は『惑星ソラリス』、後半は『シャイニング』『ヘルレイザー』という構成になっています。例えで言っていますが見ればわかります。本当にそのまんまです。
この辺にはアクション映画、ホラー映画が大好きな映画オタクであるポール・W・アンダーソンの趣味が炸裂しています。
結局この『イベント・ホライゾン』は興行的には失敗、評価としてもB級ホラーの1本として扱われてしまいました。

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好評だったイベント・ホライゾン号のデザイン。宗教的な意味が込められているがその話は次回。

○残酷、ゲテモノ映画として再評価された。

しかし現在はSFファンの間で「イベント・ホライゾン」はちょっとしたカルト映画になっています

まずこの映画は残酷シーンが強烈で、特にイベントホライゾン号に乗り込んだ主人公たちが船内の映像ログを観るシーンは語り草になっているようです。狂気に陥った船内で乗組員たちが行う血みどろで殺し合うシーンはインターネット・ムービー・データーベースによれば「流血の乱交」とファンの間では呼ばれているようです。

しかもこの映画当初は上映時間130分の予定が、カットされて95分まで短縮されているのですが、その中には上述した「流血乱交」シーン、ラスト付近での「地獄のビジョン」と呼ばれるルイス・アンド・クラーク号の乗組員が終わりのない拷問を受けるシーンの完全なバージョンが含まれているというのです。
確かに劇中これらのシーンは断片的にしか見ることができません。ちなみyoutubu上に良く見えなかったこれらのシーンをストップモーションで細かく見ていく動画が上がっていますが要注意です。あまりにグロいので・・・。
それと忘れてはならいないのが主演の一人、サム・ニールの熱演(怪演)です。
ジュラシックパーク』の優しいオジサン科学者のイメージをどこか遠くへと追いやる見事(?)な芝居です。

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『地獄のビジョン』の1カット。どう見ても『ヘルレイザー』です。本当にありがとうございました。
ちなみに試写でノーカット版を上映したときに観客に失神者が出たとのこと。

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左が『ジュラシックパーク』で恐竜と戯れるサム・ニール。右が『イベント・ホライゾン』で地獄で戯れるサム・ニール。わぁ、確かに同一人物ですね♬

ポール・アンダーソンはディレクターズ・カットとしてこれらのシーンを復活させたバージョンを作りたかったようですが、フィルムが編集後に紛失したか破棄されたため断念したようです。
しかしネット上では完全版が見たい!グロシーンの完全版が見てみたいという声がよく聞かれます。この辺の一部のシーン(グロ)が見たいのに見れない感じもこの映画の人気の理由の一つかもしれません。

このSFとオカルトがいい具合に混ざり合っている本作は今では名作として扱われていて、2015年4月にはとうとうwatch mojoが選ぶ「ダメ監督のまぐれ名作映画TOP10」で『イベント・ホライゾン』が8位に選ばれる快挙(?)となりました。


Top 10 Good Movies by Bad Directors - YouTube

さらにイギリスのメタルバンド「アナール・ナスラック」の2001年のアルバム「The Codex Necro」の一曲「The Technogoat」ではこの映画の「流血乱交」シーンの音声がサンプリングされて使われています。


Anaal Nathrakh The Technogoat - YouTube

 

今回は『イベント・ホライゾン』の概要をサッと説明しましたが、次回はこの映画の中にある宗教的な思想を簡単に紹介します。この映画見かけ以上に、ストーリーを掘り下げるとゾッとする話なんですよ。 

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 まさか2枚組の映像特典付きDVDが発売されてるとは知らなかった。メイキングに音声解説がついて、ケースもカッコいい豪華仕様。